2013年9月3日火曜日

その日は突然やってきた

ニシキギに絡みついた山葡萄の実が、いよいよ瑠璃色に色づき始めたなと思っていたら、9月に入っていた。

9月1日 日曜日。もう暑さだけではない、初秋のいろいろな要素が複雑に混ざり合う軽井沢の残暑は、人々をアートへと誘うような気がする。旦那さんは、昨夜から甲斐駒ケ岳へ登山に出掛けていて留守。母と子の休日は無理をしないことが一番と思っているので、実にのんびりとしたものだ。子供を車に乗せ、軽食を買ったら、お気に入りのセゾン現代美術館へ。駐車場がいっぱいで、驚いた。

現代美術はどうも…という人は多い。だが、この美術館がコレクションしている作品は美術界が大きく変化した二十世紀、それも二十世記後半に的が絞られているから理解がしやすいと思う。今から20年前にデザインを勉強した私にとっては、教科書の中から飛び出したような作品ばかりが並ぶ、夢のような空間だ。もう数えきれないほど足を運んでいるが、その度に”今日はこの一点だけを見つめよう”という気持ちで、じっくりと作品と向き合うことにしている。こんな贅沢ができるのもここに暮らしているからこそ。今日は、安田 侃さん。

山の天気は変わりやすく、日差しが注がれた時と雲に覆われた時とでは、同じ庭でもまったく違う表情を見せる。今日は、小川に咲く存在感たっぷりの黄色い花の名を思い出した。オタカラコウだ。自然と増えたのか、はたまた人の手が加えられているのか?それさえも曖昧な、この庭の懐の広さには魅了されるばかり。

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12時をまわって、旦那さんからの下山連絡が気になりだした。家に戻るかどうか迷っているところへ、タイミング良くメールが。予想外の雨に見舞われて、甲斐駒ケ岳〜鳳凰三山〜夜叉神峠(なんと1dayで)へ降りる予定だったところを、黒戸尾根の往復で終了させたという。これだけでも本格的な登山である。子供もリラックスしているので、このまま野辺山駅まで迎えに行くことにする。軽井沢から野辺山までは約一時間の距離。その間、チャイルドシートに座った子供は窓の外に広がる景色や車を眺め、驚きがある度に独り言を発していた。私は彼のお話のなかに何度も加わりたいと思ったが、それももう遠い話ではないだろう。

旦那さんをピックアップするなり、ワイパーもきかないような横殴りの雨に遭遇した。暗雲たちこめる帰路、軽井沢もきっと土砂降りで、デッキに出したままの洗濯物はぐっしょりと濡れているに違いないと思っていた。が、幸運の女神はいた。自宅につくと、雨はなんとかもちこたえたようで、洗濯物も無事だった。

一息ついて、いつもと違うあることに気がついた。母乳である。今日は朝から一度も欲しがらずに、夜を迎えていることに。彼は母乳を自ずと断ち始めていたのだ。

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あれから3日が経過。私の母乳育児は終わった。

これまで、食べることも、歩くことも、遊ぶことも、うちの子なりのスタイルとスピードで良いのだと自分に言い聞かせながら、見守ってきたつもりだ。そうして迎えた、ひとつの成長。これからも、待つことや最低限の手助けを心掛けて、子供との信頼関係を築いていけたらな。そんな風に思っている。

2 件のコメント:

  1. さして現代美術に造詣の深くない私ですが、安田 侃さんの作品は理屈ではなく、肌で理解できるような気がして大好きです。

    私は三人育ててやっと、育児=待つことと悟りました。
    レモンリーフさんは一人目ですでに会得されていて、頭が下がります。

    山ブドウの枝とリンドウ、青いキャンドルにマッチして素敵です。軽井沢の秋が待たれる今日この頃ですね。

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    1. shizuさま いつもありがとうございます!3人のお子さんをお育てになったのですね。それはそれは、私など足下にも及びません。毎日へとへとに疲れきって、子供と共に眠りについてしまう日々です。安田さんの彫刻は街の中にもたくさんありますが、セゾンのような自然美のなかに生かされているのもホッとします。風雨と雪にさらされる軽井沢で、石がまた歳を重ねていく。長い冬休みを終えた春にここへ来ると、感動してしまいます。

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