越後湯沢から、特急はくたかに乗って金沢へ。そこから更に足を伸ばして、加賀は山代温泉へと向かった。
時刻は12時少し前。車内でスナックに手をつけなかった理由はここにある。久しぶりの北陸旅はやっぱり寿司からだろう。
評判を聞いて、はじめて入った亀寿司さん。小さなお店だけどセンスが良く、カウンター越しに心地よい緊張感を味わいながらおすすめを一通りいただいてゆく。その後は、地元のネタに舌鼓。今が旬のバイ貝に、何ともいえないコクが後を引くガス海老、そして、締めはズワイガニのメス 香箱蟹だ。
ここ山代温泉は、魯山人が陶芸を学んだことで知られる場所。彼が8ヶ月に渡って滞在していた住まいを訪れてみる。いろは草庵といい、現在は町が管理しているようである。母屋と蔵とを結ぶように増築されたモダンな空間は、よく手入れがされた箱庭を望むにはぴったりで、お茶と和三盆の菓子をそっとサービスしてくれたことも嬉しい。名前の通り庵のある間もあり、加賀の豊かな食材を囲む旦那衆の背中が目にうかぶよう。蔵には、陶芸の師匠である初代 須田精華の繊細な作品や魯山人自身が作陶した皿などが展示されていた。
今宵の宿は白銀屋。ここも魯山人ゆかりの宿であるが、温泉の泉質が素晴らしいことと、料理がすこぶる美味しいことが気に入っている。
翌朝は、部屋の露天風呂でリフレッシュ。加賀を後に、初めての金沢へ向かう。
金沢は大きな街であった。駅からしてこのスケール。
近江町市場では、昨日いただいた北陸のうまいもんがズラリ!ノドクロ、ガス海老、万十貝。アカイカにエテガレイも新鮮で破格だ。珍しい加賀野菜は目にも鮮やか。今は五郎島金時が旬だという。昼食はまた寿司。市場の中の回転寿司だったが、ネタのレベルは軽く築地を超えている。しかも、リーズナブルで言うことなしだ。
いやはや、北陸出身者が東京に少ない理由がわかった気がする。金沢は城下町。昔ながらの武家屋敷が立ち並ぶ長町を歩いてみよう。テナントとして貸している家もあるが、そのほとんどは現在でも住まわれているから、生きた美しさが感じられる。小学校の校舎もステキだが、登下校する子供達が制服を纏っているのも好印象。公立だけど制服、私もそうだったので親近感がわいた。
そんな長町で、いろり草庵でお茶請けにいただいた美味しい菓子と遭遇。試食した途端に、これだ!と思った。うちはまだ若い店なので…と店主は謙遜していたが、素材へのこだわりとこのパッケージのモダンさだ。次の時代を担うのは、伝統の中から生まれた、このような姿をしたものなのかもしれない。
はじめての金沢を私はかなり気に入ってしまったようだ。11月からは本格化に蟹のシーズンに入り、まさに北陸はオンシーズンに入るのだとか。これからも、秋になったら毎年のように北陸の味覚を味わいに出かけてみたい。新幹線の開通も楽しみだ。