2013年12月30日月曜日

一年の終わりに...

この時期は、いつも何かに急かされるよう毎日を送る我が家だったが、今年は違う。なぜだろう?と思ったら、年賀状を早めに作り宛名書きを書き終え(ここ数年はあえて手書きにしている)、既に投函していることに気がついた。たったこれだけのことで、年の瀬をゆたかな気持ちで送ることができるなんて…。これからも、今年のような師走を送れるよう心掛けたい。

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時刻は16時半。薪ストーブを焚きつけて、揺らめく炎と窓の外に広がる景色を交互に見ている。手には、12月25日に届いた彫刻家 故 船山滋生展の図録。芸術村にある梅野記念絵画館を訪れた、初夏の日に注文しておいたものだ。お待たせしたとは言え、クリスマス当日に届くよう送ってくれた、粋な計らいがすてきだ。

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展覧会へ足を運んだその日、船山さんの彫刻やデッサンを目の当たりにした私は、物事には”基礎”が最も重要なことを痛切に感じ、教えられるとともに、今から10年前の2003年に船山さんが書かれたという文章が、それ自体も作品のように思えて、震えるような感動を覚えたのだった。琴線に触れるとは、もしかすると、こういうことなのかもしれない。

今日という日は、2013年という一年を、これまでの人生を振り返るに相応しい、静かな湖面のような一日だった。

 

2013年12月25日水曜日

ホワイト クリスマス

今年のクリスマスは、軽井沢らしいパウダースノーが足下に広がる、なんともドラマティックな風景に!冬の晴れ間が続いているため雪は降っていない。夕暮れとともに子供を連れて、軽井沢高原教会へと向かった。真冬の、今にも吸い込まれてしまいそうな漆黒の夜空がイルミネーションを引き立て、ランタンの灯りが足下の雪を照らしている。もちろん気温は氷点下だ。しかし、優しさに包まれたこの日の演出に、頬を伝わる寒ささえ心地よく感じる。

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ラウンジで、小さなケーキをふたつ買った。これまでは、ホールのケーキを注文していたが、少人数の家族ではその日のうちに食べきれないことがネックだった。”美味しいものは、美味しくいただく”これが、これからの我が家のスタイル。

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クリスマスというイヴェントが終わると、いよいよ年の瀬。終わり良ければすべてよしなんて言うけれど、本当にそうかもしれない。小さな子供と暮らしていると、毎日が何かと慌ただしくて…。しかし、よーく考えてみるとそれは子供と一緒に外出する際のバタバタくらいで、実際には、ゆったりとした裕な時間が流れていることに気づくのです。

2013年12月23日月曜日

いよいよ厳冬期へ

夜空に煌めく星を見て、外の天気を知る。そんな夜を、もう何日送っているだろうか。今夜はやけに静かだなと思い窓を開けてみると、外はすっかり雪化粧!気温はマイナス5度。いや、それ以下に落ち込んでいるだろう。なぜなら、その雪は木の枝にも着かないほどさらさらの”粉雪”だから。

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翌朝、冬の青空が映り込んだ、白銀と呼ぶに相応しい雪の上を小さな足がつかまえた。雪は、生まれた時から見てきている君だけど、しっかりとそれを雪と意識して一人で歩くのは、きっと今日が初めてのことと思う。これから訪れる厳しい寒さに、私たち大人はえも言われぬ緊張を感じ、怖じ気づいている今日この頃。だが、雪を新しい友達として満面の笑みで迎えている君を見ていると、こちらまで元気になってくる。

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いつまでも、子供の心を忘れずにいたい。何もかもが初めてという、新鮮な感覚と感動を。

2013年12月17日火曜日

三水の林檎と雪待ち

長野県の北部は既に厚い雪に包まれ、ここ軽井沢もいよいよ雪の予報が出るようになってきた。そうなると、暖かいリビングで一日中じっとはしていられない。冬籠りの最終確認に忙しい日々を送る。

お店に行くと、収穫を終えたふじ林檎が箱一杯に詰められて売られている。赤いその一箱が、またひとつまたひとつと手に取られ、たくさんの家庭の常備果実となってゆく。私は、この時期のそんな眺めが好きだ。

戸隠へいった折に、偶然出合った飯綱町”三水”の林檎。三つの水と書いて、さみずと読む。林檎はいろいろ食べてきたけれど、ここのふじが一等賞だ。長野県の北部、標高550mの乾いた空気と寒暖の差が生み出す蜜入り林檎の、なんと香り高いこと。

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明日から雪マークって、ほんとう?午後四時の空は息をのむ美しさ。

そして、昨日に引き続きまーるいお月様が。久しぶりにトンボの湯へ行き、冬の夜空の美しさに触れた。

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2013年12月5日木曜日

冬の檸檬で作りたいもの

冬になると、私の実家からレモンが少しずつ届く。農薬などかけていないから、安心だ。レモンはぎゅっと絞った果汁の爽やかな酸味もさることながら、その”皮”の香りが格別。私はさっそく、大好きなクレーム・ブリュレ作りにとりかかった。

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これが、オーヴンから出てきたところ。すり下ろしたレモンの皮が約一個分入っているので、濃厚な味わいのはずなのだが、意外とさっぱりといただける。後はストーブトップでソース(レモン果汁と皮のすり下ろし、グラニュー糖)を煮詰めたものを上にガラスのように回しかけ、冷蔵庫で一番寝かしたら完成だ。

夕暮れ前の、刻々と移ろう空を眺めながらスイーツを仕込む幸せ。まだ雪のない軽井沢では、静かで穏やかな時間が流れている。

2013年11月26日火曜日

戸隠へ

どうしても新蕎麦を味わいたくて、土曜日は戸隠まで車を走らせた。信濃町のインターを降りた時点では、町はゴーストタウン。だが、山深い戸隠の杜へさしかかった途端に、どこにも車を停めることができない!という混雑ぶり。奥杜は、先週降ったと見られる雪に包まれ、ただでさえ険しい戸隠の山肌が、雪をつけて更に厳しい表情をしていた。お目当ての蕎麦屋もいっぱいで、ならば先へ行ってみようと、中杜方面へ。そこは宿坊が軒を連ねるエリアで、落ち着いた雰囲気が漂っていた。なんだかいい予感がする。

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やはり、美味しいものはあるもので、山の湧き水を使った蕎麦屋を見つけた。口に運ぶと、新蕎麦の濃厚な香りと水の良さがストレートに伝わる。今の時代、いいそば粉を使った蕎麦屋はどこでもあるだろう。しかし、この水には叶わない。

近くには、特産の竹細工の店が何軒があり、独特な模様の美しいざる作りを見ることができる。ざるは、我が家もかれこれ10年近く愛用しているが、根曲がり竹の醸し出す風合いとタフさには惚れ惚れしてしまう。

今回は、左の大きな籠を購入。これからの季節、我が家の玄関ホールは果物や野菜の貯蔵スペースになるので、それらの入れ物として。美味しい食材は、それに見合った器を合わせてあげたい。

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戸隠の竹細工に使われる竹は、”根曲がり竹”というもので、戸隠山からいただいてくるのだそうだ。数少ない職人たちは毎年9月から約一ヶ月をかけて、山へ白装束で入るという。ご神体である山とともにある、素朴な暮らし。戸隠の竹細工を眺めていると、質実剛健な、それでいて温もりのあるこの土地の空気を垣間みることができる。

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2013年11月14日木曜日

残されたのは、鮮やかな木の実

ここにきて、寒さの質が変わってきた軽井沢。明け方はマイナス5度、日中も5度ほどしかなく、浅間山も少しだけ冠雪。昨日などは、離山の霧氷が夕方まで消えることはなかった。私は毎朝、子供が眠っている間にその日分の薪を、デッキの薪棚から運び入れるのが日課。玄関のドアを開けると、まず空気の冷たさに驚いて、壁にかけてある上着を着込む。少し前までは、ちょっと外へ出るのに上着は不要だったはず。が、今ではその一手間を面倒と思わなくなった。

”子供は風の子”とは、よく言ったものだと思う。どんなに寒い日でも、晴れてさえいれば「外へ行こうよ!」と指を指して私に訴えてくる。だから私も、本当に外で過ごすことが増えてきた。子供のように動いていると、不思議なもので寒さも和らいでゆく。

空はいつの間にこれほど蒼くなったのだろう。僅かに葉っぱを残した落葉樹の枝が、隣り合った枝とぶつからずに生きていることの不思議。透き通る鳥の声。こんなに冷えた日だからなおさら感じるのか?お日様の暖かさはやさしくて、偉大。

この時期の子供は落ち葉でいっぱいになった道を歩くことを、楽しみとしているようだ。わざと音を立てるようにそぞろ歩きをしてみたり、塊の中にダイブしてみたり、しゃがみこんで、大好きな木の棒や実を探していることもある。今日は、落ち葉のクッションの上に偶然落下した(いや、鳥が啄んだ後なのかもしれない)、鮮やかな紫色の実を見つけて大はしゃぎ。小さな瞳はきらきらと輝き出して、しばらくその実を大切に握りしめていたが、ふとした拍子に興味はいつもの石へと変わっていった。私はその実をリビングのガラステーブルの上に置く。紫式部の実は食用で甘いことを知ったばかりだった。これなら誤って口にしても問題はない。それにしても、なんて綺麗な色をしているのだろう。

夜になって、子供は覚えたばかりの、ダイニングの椅子にこしかけるという行為に出た。大人だけの特権のようだったこの場所に自分もいられることが嬉しくて、得意になっている。見ている方はひっくり返るのではないか?とヒヤヒヤするが、意外と安定している。テーブルに乗らずに済むなら、そのままにしておこう。すると...昼間見つけた例の実を手に取り、近くにあったポストカードや紙袋の上に乗せて、潰して、遊びはじめたではないか。

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そろそろ切り絵でもやらせてみようかなと考え、教材を取り寄せていた私は、それを見てまた初心に戻ることに決めた。今はまだ、いろいろなものを見せたり、でかけるだけでいい。それから先は、子供自身が決めることだ。

これから、長い長い冬へと向かう軽井沢。全ての葉を落として、枝先に美しい実だけをつけた木々を眺めていたら、この世の中に無駄なものなど何もなく、すべては誰かの為に。役にたつために存在しているという、とてもシンプルな命の営みに気づかされ、清々しい気持ちになった。

2013年11月11日月曜日

紅葉の見納めに...

落葉松が、まるで降り積もる雪のように辺り一面を金色に染めてゆく。足下は、ふかふかのじゅうたん。そこには、落葉松より先に地面に着地したいろいろな木の葉が、静かに眠りについている。軽井沢の紅葉は早い。どこよりも早いなと思う。今年の紅葉の見納めに、さてどこへ行こうか。

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旧信越本線 碓氷第三アーチ。めがね橋という名で親しまれている、碓氷峠の名所だ。

近づいてゆくと、煉瓦造りが芸術的で素晴らしい。明治時代に、ドイツ ハルツ山鉄道のアプト式を採用したことから、路線後の遊歩道を”アプトの道”と呼んだりもする。今から二十年くらい前になるが(もちろん、まだ新幹線がなかった頃)、私はこの橋を上野駅から乗り込んだ信越本線で渡ったことがあったと、思わず錯覚してしまいそうになった。その時はボックス席にひとり。周囲は故郷上田へ法事の為に帰省する、黒装束の家族だった。初対面だというのにいろいろな話をして、あっという間に長野に着いてしまったことを覚えている。

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橋も素晴らしいが、その下を流れる清流がまたいい。

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橋の上から峠道を見下ろす。オープンカーやバイクで来ている人も多く、晴れ間が約束された土曜日は、みな紅葉を楽しむために遠くからはるばるやってきた様子だった。山が見せてくれる四季折々の表情に、この秋もまた感謝。

2013年11月7日木曜日

2年ぶりの金沢

三連休を利用して、北陸へ旅に出た。ちょうど二年前のこの時期だったと思う。大きなお腹を抱えてあっぷあっぷしながら、特急はくたかに乗り込んだことが、まるで昨日のことのように思い出された。お腹の子は無事に産まれて、現在は一歳8ヶ月に。およそ初めての地とは思えぬ速さで、美術館の庭を休みなく駆け回っていることが嬉しい。しかし、小さな子を連れてアウェイを歩くことは、想像以上に大変なことだ。そのような中で、大人も子供も旅を楽しめたなら、最高。

前回は加賀の宿に泊まり、近江町市場に立ち寄ったくらいだったが、今回はどうしても行きたい場所があった。九谷美術館と二十一世紀美術館だ。

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九谷美術館はその名の通り九谷の歴史を、色ごと(即ち、それが時代を表す)に見せてくれるユニークで贅沢な美術館。ランドスケープデザインも秀逸で、何時間でもいたくなる居心地の良さ。もちろん、プリミティブな庭は子供も大喜び!

二十一世紀美術館もまた、贅沢なパプリックスペースがあり、さすがは美術と”工芸”のまちだなーと感動。

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こちらはタレルの部屋。ほんものの空をすっぱりと切り取る発想に脱帽!壁ぞいに座れるようになっていて、空だけを仰ぐという未体験の心地よさに陶酔する。

金沢は水路のまちである。城や城下町を守るために敷かれた水路がそこかしこに流れ、歩いていると、とても清々しい気分になるのだ。電力に乏しかった明治時代にはこの水の力を借りて、繊維業も盛んだったことを知る。群馬の富岡製糸の次ぐ規模だったそうだ。

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図書館も、なんだかモダン。

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雰囲気のある美味しいパン屋さんもあって。

赴きある城下町の風情と北陸の味覚、生活に根付いた工芸、そこにモダンなアートも加わって。じっとしていられない子供と一緒に歩いた怒濤の三日間だったけれど、いいものがぎゅっと集結したこの街が私は大好きになってしまった。終の住処は金沢?そんな夢を抱いてもいい。

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素敵なファサードだなと思って横を通ってみたら、髪匠ですって。

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近江町市場では、地物の活き”がすえび”と甘エビ、生たこや能登のへしこなどを。まちなかでは、山中塗のワインクーラーや水引細工、九谷の若手作家による酒器などを買って帰路についた。

翌日6日は加能蟹漁の解禁日だったようで、思えば嵐の前のちょっと静かな金沢・加賀だった。

2013年10月29日火曜日

薪ストーブで暖をとる日々

いよいよ、薪ストーブを本格的に焚くようになった。そこで必要になるのが、焚き付けの際に使うソダというもの。どんなに乾いていても、いきなり太い薪から炎があがることはない。着火材を使う手もあるけれど、松などを細かく切ってよく乾燥させた木材=ソダがあれば、ストレスなく焚き付けの時を過ごすことができるのだ。これ、本当に大切なこと。焚き付けに一時間かかってしまうなんてことは、ざらだから…。

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軽井沢のスーパーも、北欧なみかもしれないな。これは、MATSUYAの売り場。この唐突な眺めには正直びっくりした。しかもナラが一束で714円とは...。商品化された薪のなんと高いこと。

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薪ストーブはクリーンで美しくて雰囲気があって、他に類を見ないほど素晴らしい暖。しかし、燃料となる木材の調達から保管、焚き付けるその瞬間まで、実際には膨大な手間と時間がかかっていることも確かだ。そんな苦労を一瞬で忘れる力があるから、私は死ぬまでこの暖房とともにある暮らしを送っていきたいと思ってしまう。

2013年10月28日月曜日

秋の味覚を堪能して

日本人の味覚の素晴らしいところは、”繊細な香り”ではないかと思う今日このごろ。

先日は南相木村まで出向き、村の特産品である松茸を味わってきた。

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土瓶蒸しもいいけれど、新蕎麦にたっぷりと乗った松茸の香りや歯ごたえと言ったら…。山国にっぽんの秋を堪能した。

そして、一昨日は東御市のローカルベンチへ。美味なるパン屋さんが年に数回だけ手がける期間限定のランチを味わいに。

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まずはこれで乾杯!カンパーニュの上には、鹿肉を使用したパテがたっぷり。丁寧な仕事がされた前菜の盛り合わせや、栗の入った具沢山のスープに舌鼓。デザートは秋映のワイン煮とバニラアイスで、最後まで素晴らしいメニューだった。

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この時期だけは、お財布もウエスト周りも、少しだけ緩みがちな我が家です。

いい季節です

朝晩の冷え込みと、暖房による乾燥。大人も喉の調子がおかしくなるような日々。だから、気管が細くて弱い子供との暮らしは何かと神経を使う。鼻水が出るとか、自分で鼻をかめるとか、そんな当たり前のようなことがスムーズにできないのが、幼児というものなのだ。

しかし、日々の成長には驚かされるばかりだ。少しずつだが、子供との散策が落ち着いて楽しめるようになってきたことも、そう。私たちは午前と午後の二回、自宅の近くをのんびりと歩く。

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どんぐりの敷き詰められた、私道。

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ドラマティックな西日にしばし目を奪われることも。

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2013年10月25日金曜日

色づくって、いいな

冷たい雨が、木々の紅葉を加速させている。今日の浅間山はすっぽりと雲に覆われ、そこに山があることを忘れてしまいそうだ。

この季節は、とにかく車を運転するのが楽しい。何気なく眺めてきた緑が、徐々に色づいてゆく。それが昨年の秋とは少しずつ異なっているという、そんな小さな変化を見つけるのが楽しいのだ。いつも眺めている自庭なら、なおさら。

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からりと晴れた日もいいけれど、今日のような雨の日も好きだな。濡れた葉の艶っぽい美しさと言ったら。

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同じ根っこから生えてきたのに不思議だね。黄葉で終わるものもあれば、さらに赤く色づいてゆくものも。

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山の寄せ植えも秋色に。ヤマリンドウが花開き、ヤマボウシは深い赤に色を染めた。

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いよいよ10月も最終週へ。日中の気温が一桁台なんて日も出てくるだろう。霜が降りるその日まで、ヤマリンドウの可憐な青花の傍らで庭仕事を楽しみたい。

2013年10月15日火曜日

楽しい紙

素晴らしい秋晴れに恵まれた土曜日、私は駒形克己さんのワークショップに出ていた。駒形さんは、ニューヨークでグラフィックデザイナーとして活躍した後、絵本の制作に着手した方。数々の美しい”紙”の世界はご存知の方も多いと思う。その絵本を作ろうと思い立ったきっかけが、実は娘さんの誕生だったとご本人の口から発せられ、その娘さん(なんともう、25歳に!)や奥様もお手伝いに来ていたから、嬉しくなってしまった。和やかな雰囲気に包まれた会場でのワークショップ、これほど魅惑的なものはない。

三つに折りたたまれた白い紙の上に、赤い三角形がプリントされている。広げて一枚にすれば、三角形の断片があるだけ。これを思い思いのイマジネーションで作品とするという試みだ。与えられた時間は約一時間。参加者の多くは子供とその親たちだ。

テーブルの上には、色紙と、はさみと、のり。それを見るなり、子供たちの手は、瞬く間に動き出した。が、大人たちはまず構想、構想、構想。なんで、いつになっても手が出ないのかしらと思いながら…。

赤い三角形の断片を眺めていたら、私にはなんだかカクテルグラスに見えてきて。赤にはぜひ緑と黒を合わせたいな。そんな風に一度方向が決まったら、手が勝手に動き出すではないか。マティーニとワインを傾ける。これが、日ごと秋色に包まれてゆく今の私の気分なのだろう。

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これ以上ないほどにシンプルな教材。

「スタートは皆おなじ。でも、いろいろな答えがある。あっていいと思う。これこそが個性だから」とは駒形さんの言葉。完成された絵本しか手にとったことがなかったけれど、今回は駒形さんのご家族に会えたことで、作品の見方が変わっていくのだろうな。そう思った。

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集中力が必要で、終わったらどっと疲れてしまったけど、それ以上に楽しい創作時間。これを機に、子供と楽しめる絵本を幾つか作ってみようと考えている。まだ頭の中には、三角の断片が...。円でもいいかな。

2013年10月2日水曜日

一人で過ごす、東京

9月最後の週末、我が家はちょっとした冒険に出た。旦那さんにとっては、初めて子供と二人きりで実家へ向かう列車の旅。そして私にとっては、子供が生まれてから初の、”ひとり”東京だ。

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進化の止まらない日本の駅だが、東京駅には叶わない。レンガ造りの東京ステーションホテルが、周囲のモダンな建物と見事に調和をとってゆく様は、歴史のあるものを丁寧に保存・維持してきた長年の努力の賜物だ。話題の商業ビル KITTEの中にも、旧中央郵便局の局長室が再現されるなど、スクラップ&ビルドだけでない、ほんもの感がそこかしこに見られる。

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東大が1877年の開学以来蓄積してきた、学術標本や研究資料などをドラマティックに展示した美術館が、KITTEの中にできたことも嬉しい。化石や鳥類の精巧な剥製といった歴史的な遺産。その美しさに開眼させられる、とても贅沢な空間だ。

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丸の内から皇居まで続く通りも、ここにきてぐんと魅力的になった。休日に歩きたくなる通りとしては、いま一番旬なのではないだろうか。

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大好きなエルメスのウインドゥ。振り袖を纏ったお嬢さんと両親の後ろ姿に、日本の美しさを垣間みる。

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2020年には、この東京でオリンピックが開催される。子供ができたことで、少しずつ将来を見据えるようにはなってきたけれど、具体的に7年後のことなど考えたこともなかった。しかし、オリンピックのお陰で未来が射程距離に入ってくる。世界的なイヴェントにはこんな恩恵もあるのですね。