2013年7月31日水曜日

賑やかなる夏

毎年恒例の夏のBBQが終わった。幼児を含めると総勢12名という、ちょっと大掛かりなものになりそうだったし、当日の空模様にも不安があった。小雨ならデッキで炭火が熾せるかな?しかし雨脚が強まったら、すべての料理を室内で行うことになるだろう…となるとメニュー構成も変わってくるな。招く側は、様々なシチュエーションを想定しなければならないので、気苦労は多い。

それでも、私は人を招くのが好きな方である。自分が育った家は来客が多く、ほとんど毎日のように誰かが訪れている家であった。その度に、母や祖母がせっせとおもてなしをしているのを目の当たりにしてきたことが、少なからず自分にも影響しているのだと思う。ちょっとお茶くらいなら、リビングや洗面コーナーをささっと綺麗にする程度で済む。だが、日帰りでも長時間の滞在となれば、家の中全体を片付ける必要が出てくる。これが料理より何より大変なのだが、こういうことでもないと本格的な整理整頓はできない。増えすぎたものを潔く捨てる機会をくれる、ホームパーティさまさまである。

どんどん身長が伸びて、手の届く範囲が広がってきた子供のいる我が家のテーブルの上は、さながらモノの避難場所だ。気がつけば一人暮らしの老人のように、必要なモノを常に置いておく生活に。庭の緑が映り込む、磨き甲斐のある透明のガラステーブルだってことを忘れていた。

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今が旬のトウモロコシをどう食べるのが美味しいだろう?と思い、二日前に(生地づくりの)予行練習をしたトウモロコシと満願寺唐辛子のピザは黒胡椒を効かせて。

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当日の午後、生地から打って焼こうと考えていたのだが、みんなの満腹具合を見ると大過ぎるなと判断し、断念した。

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こちらは、当日の朝に仕込みを終えたクリーム・ブリュレ。今回はパトリス・ジュリアンさんのレシピをチョイス。レモンの風味が効いて、後味がさっぱりとしているところが美味しいと好評だった。

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夕方になってやっと雨が上がり、子供たちは待ってましたとばかりにまだ濡れたデッキへ駆けていった。こうして見ると、我が家のリビングもずいぶんポップな色合いが増え、賑やかになったものだ。

そして思う。子供を見つめる大人たちの眼差しが、やさしくて美しいと。

子供は親が育てるものだろうか?いやいやどうして、この小さな子供たちが(自分は大人だと思い込んでいる)私たちを、ほんものの女性や男性に育てているのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2013年7月27日土曜日

わずか10日で...

10日前の、ちょうど今くらいの時刻の仕事部屋。コレクションしている鋳物や焼物が、朝日に照らされて陰影を作り出し、思わずシャッターを切っていた。

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こうして見ると、今では頭を垂れた山紫陽花やシモツケの花も、盛りだったことがわかる。

一時は、デッキにプールでも置こうかと本気で考えたが、どうやら今年の夏も静かに秋へと移り変わる気配が漂ってきた。ノースリーブが欲しくて欲しくて、急いで買いに出掛けた酷暑とさようなら。今のうちに、まだ袖を通していない夏の衣装を纏おうか。わんぱくな子供がいるお陰で、実際は大人だけの暮らしより遥かに夏を謳歌させてもらっている私。だが、生きていることが楽しくて、学んだことが次々と身についてゆくことが嬉しくて仕方のない彼を遠目に眺めていると、つくづく思う。いつか着よう!とか、使おう!と思って”好きで”買い集めたものをとっておいてはいけない、次々と日の目を浴びさせることが最も大事だと。箪笥(なんてものも我が家にはないが)にしまい込むことは、決して重要なことではない。

部屋の掃除をしていて出てきた古いファイルの中に、ユキ・パリスさんのエッセイがあった。

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好きなものと共に暮らすのは楽しいことです。朝、目が覚めて最初に目にするのが、青い空や朝日に照る緑の葉や好きなものだったなら…ハッピーな一日が始まる予感がします。私の人生の中で好きなものを探すために使う時間はとても多いと思う。

西洋の人(中でもイギリス人はすごい!)は、大なり小なりもの(特に古いもの)を集め、それをインテリアに取り入れて自分を表現しています。書棚からはその人がある程度わかるし、集めたものからもわかります。

「その人らしい家」….西洋の人はそんな家作りに精魂を傾けます。

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ふむふむと読んだ。そうか、そうだったのかと。こういうことがさらりと書けてしまうユキさんは、やっぱりただものではなかった。

初めて、好きになった人の部屋に遊びに行った時の感動と言ったら。部屋の隅々まできょろきょろと眺めて、この人は本当はどんな人なんだろう?と観察したものだ。

自分が惚れ込んだものを飾ったり、使い込むことこそが、日々の暮らしにおいては最大の醍醐味かもしれない。我が子も、ここにあるようなものたちから、少しずつ私を知ってゆく。

 

2013年7月24日水曜日

ありそうでないもの

日曜日は、梅雨のような曇り空の軽井沢を抜け出して小海へと向かった。お目当ては小海高原美術館に併設された、”cafe 花豆”である。真夏になると、私は天空に近い、この高台からの八ヶ岳と乾いた空気に無性に会いたくなる 。

花豆の魅力は、なんといっても野菜の美味しさ。ランチメニューの中から、自家製ロースハムとサラダをオーダー。ネーミングに負けない迫力に、果たして完食できるのか?と思ってしまうが、心配はない。もし、野菜嫌いの子供がいたら、ここに連れてくるといい。

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土曜日から始まったという、露地物のトマトを使ったデザートも絶品!

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お隣には、こんな素敵な公園も。

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木立のボリュームと遊具の配置バランスに、抜群のセンスを感じる。軽井沢にも公園は多々あるけれど、大抵は芝生だけだったり、カラフルな遊具だけだったり。見た目はすっきりしているんだけど、いざそこに行ってみると日差しがきつくて、とてもじゃないが長居はできないことに気づかされるのだ。ひとが心地よいと感じる”木漏れ日”の空間。これを維持するには、私たちが想像しているよりずっと、手間もお金もかかるだろう。でも、いま求められているのはこのようなもの。作る価値は充分あるはずだ。

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黒い木馬のシーソーは、デザインも乗り心地も秀逸! もう少し自宅の庭が広かったら、手作りするのだけど。

2013年7月16日火曜日

いつもの夏が戻ってきた!

海の日の三連休の前日まで、30度を超える暑さが続き、このままでは避暑に訪れた人たちもガッカリ落ち込んでしまうのではないか?そう思っていたけれど、高原に女神あり。連休の初日から、天然のクーラーを感じさせる空気が、草木の香りを連れだって辺り一面を満たすようになった。

いま、軽井沢は空前の朝カフェブーム!私も子供と一緒に、立て続けにカフェに通った。

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ラトヴィアのかご展が開かれていた追分の”みかげ茶屋”では、ココナツミルクのぜんざいとわらび餅の甘味セットを。水牛のマイスプーンで我が子も一口。手作りにこだわった素敵なお店は、朝から多くの女性で賑わって。

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南軽井沢の”ル・プティ・ニ”では、浅間小町を使ったふわふわ卵のサンドイッチを。私は、ここのマスターが淹れる美しいカフェオレが大好き。それほど車が停まっていなかったので店内はガラガラかしら?と思っていたら、道路脇に10台近いロードレーサーが並び、店内では男性陣が腹ごしらえ。軽井沢の夏を楽しむのは、車ばかりではない。

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この時期、自宅の夕食は新鮮な野菜がごちそう!焼いた茄子にズッキーニ、梅酢でもんだきゅうりに刻んだシソをたっぷりと。焼き魚は好物の飛び魚。夜の7時をまわっても外はこんなに明るいから、庭仕事のしがいがあるというもの。

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長倉神社の花火大会だった土曜日。まだ浅間山の輪郭が見え、信濃鉄道の列車が交差する夜空に打ち上がる花火は、なかなか雰囲気があった。

2013年7月12日金曜日

蛍の飛び交う

いま、軽井沢の夜は静かな蛍ブーム。日中は30度を超えるかつてない厳しい暑さで、とても避暑地と呼べるものではない。が、蛍たちが活発に動き回る時刻(20時くらい)になると、ようやく天然の涼しさを感じることができるのだ。この夏が特別に暑いのか?あるいは、この先もずっと日本のヒートアイランド化は進むのか?と不安になるが、軽井沢にはまだ朝晩の”気温差”が存在している。それは暮らしを取り囲む”土”がもたらしているものだ。最近は手入れがし易いと、駐車スペースをアスファルトで舗装する家が増えてきているが、ここなら浅間石の砕石を敷いた方が理にかない、周囲の緑とも溶け合う。土の見える暮らしを大切に…。

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発地の水田と塩沢湖に注ぐ沢の二カ所で、沢山のゲンジボタルとヘイケボタルに会った。源氏と平家だなんて。昔から日本の夏の夜には、こんなにかわいい光る虫が同居していたのですね。

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庭では、まるで彼らと待ち合わせをしているかのように、ホタルブクロの花が咲き始めて。

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花屋で買ってきて植えたものではない。トラノオや山萩や山紫陽花と同様に、自然と地面から生えてきたものだ。

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今年も我が家の山紫陽花(道路との境にある)は、ひとつの株から白とブルーの花が咲くという、ユニークな咲き方をしている。

梅雨が明けてから急に暑くなったしまったので、夏の花の開花が例年より早足で進んでいる。ただでさえ短い夏だ。いつもの賑やかな眺めが今年はあっと言う間に去ってしまいそうで、ちょっと切ない。

2013年7月10日水曜日

八ヶ岳を満喫

梅雨明けの便りを聞いて、小淵沢まで足を伸ばした土曜日。

八ヶ岳周辺の魅力は、なんといっても眺望。アップダウンの激しいドライブを思いきり楽しむには、四駆が必須だ。オーナーのブルジョワ的な世界観に圧倒されるカレーの名店 アフガンはお気に入りの場所。もうずいぶんと古い建物だが、それがこの店の魅力を一層引き立てているような気がする。混雑するランチ時間をずらしたこともあり、子連れだったが特等席に案内してくれた。

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オーダーはもちろん、ベーコンエッグカレー。大皿に収まりきらないほどの大きさに圧倒される。ここに深みのあるルーをかけてと。食べるのは数年ぶりのはず。だが不思議だ。たった一口で、その当時に起こったいろいろなことを思い出すことができた。

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お腹が満たされたら、すぐ上の八ヶ岳倶楽部へ。コアジサイの咲く時期に訪れようと、春のうちから決めていた。

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山野草を扱う中庭(という売り場)もモダンにリニューアル。実は私、家の庭作りに取りかかろうとした2004年ごろ、庭の作り方が皆目わからない状態で。「これはもう、自分にとってここが一番!と感じる場所へ行き、何かを感じ取ってこないと」と思い、ここでの住み込み修行に踏み切ったことがあった。

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 私がいた時以上に、山野草のバリエーションとセンスの良い寄せ植えが増えていることが嬉しい。なんといっても八ヶ岳倶楽部の魅力は、さりげなく人の手が加えられた(このさじ加減が絶妙)美しさだから。

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ステージの草屋根は、ちょうど私がいた頃に施行されたもの。すごいな、ここまで周囲と馴染むなんて。

最後は小淵沢へ。リゾナーレのブックス&カフェにワインの試飲コーナーが出来たというので、密かに楽しみにしていたのだ。小淵沢は、信州と甲州にまたがる日本ワインの聖地と言っていい場所で、ホテルではそれらのワインと食事のマリアージュが楽しめる。そして、数年前からはリゾナーレも女性醸造家を招いて葡萄栽培に着手。収穫した葡萄で、高品質なワインが醸造されるようになった。特にメルロー、繊細で香りがすてき。

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このホテルに、日本のワインを導入してゆくことを仕事とさせていただいた時期があり、それぞれのラベルを見ていたら、ワイナリーで働く人の顔とその時に交わした会話が思い出された。

こうして思い返すと、私はいい時代に、貴重な仕事をいただいて、なんと本物を見る機会に恵まれていたことか。これからは、自分自身の経験を生かして、”いい時間”を作るお手伝いをしてゆきたいと思う。

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2013年7月5日金曜日

緑色のお皿

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沖縄旅行のお土産として選んだ、山田義力さんのお皿。まず色合いに惹かれ、ボリュームがありながらもスタッキングが可能で、置き場所を取らないことが購入の決め手となった。

これ以上増やすまいと思っている器だが、やはりこの世界にも出会いがあり、数年の間に新旧が入れ替わる。今春は、友人の息子さんが京都の大学に進学するため一人暮らしをはじめると聞き、不要になった食器や使っていない毛布などを、引っ張り出したものだ。一時は、まるでフリーマッケットの会場のようになった我が家のリビングを訪れた彼が、瞳を輝かせて「全部使いたいです!」と持って行ってくれたことが嬉しかった。中には、18歳が日常使いするには早いなと感じられるようなイイモノもあったが、百円ショップのマグカップやご飯茶碗で、満足する毎日を送っているようでは困る。

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庭のいたるところで、ヤマオダマキが咲き始めた。限りなく繊細なんだけど、麻のように芯が強いひと。

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現在のアプローチの様子。軽井沢の庭が、一年の中で最も華やかなときではないかな。

2013年7月3日水曜日

10年目の庭で

約一ヶ月ほど前に作った即席の寄せ植えが、ここにきて風景にしっくりと馴染むようになった。たかが寄せ植えではない。やはり、これとて”雨降って地固まる”ものなのだ。

今日は、いかにも軽井沢らしいエピソードから。デッキに置いた寄せ植えの周りに、シジュウカラが頻繁に訪れるようになったと思っていたら、彼らの目的は”苔”だった。苔を雛のベッドとして利用しているなんて微笑ましい。野鳥が通う寄せ植えも、いいんじゃないかな。同じ環境で暮らす者どおし。夏の間は、寛大な気持ちで見守りたい。

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葉っぱばかりで、しばらく色気のなかった庭に、山紫陽花やシモツケの花がちらほらと見られるようになってきた。トラノオやホタルブクロも蕾を膨らませている。そう、蛍の飛び交う季節の到来。

落葉松林を切り開いて家を建て始めたのは2002年の夏。移住の先駆者として雑誌に掲載されたこともあったが、いま、その紙面を見返すとそこには新しい家があるというだけで、裕さとはほど遠い、冷たい暮らしぶりしか伝わってこないから恐ろしい。殺風景だった砂利の庭に、腐葉土を入れて山の樹を植え始めてから、かれこれ10年。家が、その人の家らしくなるのに、最低でも10年は要することを、この庭が教えてくれた。

今回作った寄せ植えは、庭で育った幼木や自然と増えた山野草を使ったもの。人にも散髪が必要なように、庭木にも剪定や間引きが必要になるので、この機会を利用しない手はない。地面ではなく、こんどは移動ができる”鉢という晴れの場”で、植物に新しい生き方をさせてみてはどうだろうか。落葉樹ばかりなので、秋になれば紅葉も楽しめる。そして、これには毎年驚いているが、彼らは見事に越冬する。

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もうひとつの寄せ植えは、ドウダンツツジや山紫陽花、ヤマリンドウなどを組み合わせて。晩秋に、濃紫に色づくヤマリンドウの葉の美しさと言ったら…。

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ぜひ一緒に作ってみたいなと思う方は、ご連絡をいただけると嬉しいです。軽井沢の短い夏を謳歌いたしましょう!